家族の支持や反対は、飲食店を開業する人の意思決定や生活に大きな影響を与える。しかし、実際の顧客の購買意向や店舗の収益性を証明するものではない。開業の可否を判断するには、家族の意見を予想需要とコスト構造に関する仮説へ置き換え、売上が期待を下回っても耐えられるかを数字で確認する必要がある。このときの数字は成功を約束する予測値ではなく、リスクが高まる条件を事前に見つけるための判断材料である。
家族の評価は顧客検証とは異なる
家族は、創業者の調理能力や誠実さ、資金事情、生活環境を身近で把握している。そのため、家族の意見は無視すべきものではない。特に家族の資金を投入する場合や、家族が店舗運営に参加する場合は、勤務時間、収入が途絶える期間、追加の資金負担について一緒に話し合う必要がある。
ただし、料理がおいしいから成功するはずだという期待や、商売は危険だという反対意見だけで事業性を判断することはできない。家族は対象商圏の実際の顧客を代表しておらず、好意的な試食の反応もリピート購入を意味するわけではない。意見の強さよりも、その意見にどのような前提が含まれているかを確認する必要がある。
例えば、客が多く来るはずだという期待は、時間帯別の予想顧客数と再来店の可能性に置き換えられる。価格が高いという懸念は、対象顧客が受け入れられる客単価に置き換えられる。運営が大変だという指摘は、営業時間、最低限必要な人員、注文が集中する時間帯の処理能力として具体化しなければならない。
予想売上は店舗の処理能力から算出する
予想売上を希望額から先に設定すると、必要な顧客数を無理に当てはめやすい。座席数、現実的な回転数、実際の営業日数、テイクアウト・デリバリーの比率、時間帯別の需要を関連付け、店舗が1日に受けられる注文数から確認する必要がある。
基本的な計算方法は、1日の予想顧客数に客単価を掛け、実際の営業日数と結び付けるものである。反対に、1日の目標売上を客単価で割れば、必ず確保しなければならない顧客数が算出できる。この顧客数を座席数や調理能力で処理することが難しい場合や、商圏調査で確認した需要を上回る場合は、計画を見直さなければならない。
登録図書『外食業創業成功戦略』では、月単位の数値を日単位に分ける際、暦上の日数ではなく、定休日や営業時間の短縮を反映した実際の営業日数を使用すべきだと説明している。1日の目標売上についても、繁盛日の平均ではなく、通常の営業日に確保すべき最低ラインとして捉える必要がある。
損益分岐点は固定費とメニュー原価から考える
売上を検討すると同時に、メニュー別の販売価格、食材費、包装費、決済手数料、割引およびデリバリー関連費用など、販売量によって変動する項目を区分する必要がある。メニュー原価は標準レシピだけで確定せず、実際の使用量、廃棄、少量仕入れによる単価の変化を反映しなければならない。
賃料、管理費、通信費、最低限の運営人員にかかる人件費など、売上がなくても発生する支出は月間固定費として計上する。特に、最低勤務人数の給与をすべて変動費として処理すると、損益分岐点が実際より低く算出される可能性がある。割引キャンペーンや廃棄費用まで除外すると、売上が増えても利益が残らない構造を見落とすことになる。
月間の損益分岐点売上を算出した後、実際の営業日数で割り、さらに客単価で割ると、1日に必要な販売件数や顧客数を確認できる。この数値が店舗の座席回転率、厨房の処理能力、商圏需要と一致しない場合は、家族を説得する前に、事業規模や賃貸条件から見直す必要がある。
開業費用と事業を維持する資金は分けて考える
保証金、権利金、内装、設備、初回仕入れ品などの初期投資費用と、開業後に使用する運転資金は分ける必要がある。設備や内装に資金の大半を投入すると、開業初期の売上不振、追加工事、人員の変動が発生した際に対応できる余地が小さくなる。
運転資金を検討する際の核心は、毎月予想される現金不足額と現在利用できる資金を比較し、資金が尽きる時点を把握することである。創業者の生活費、融資の元利金、税金など、店舗の損益計算書には表れなくても現金を圧迫する項目についても別途確認しなければならない。不足分を家族の資金で補う計画であれば、金額、期間、中止条件を開業前に合意しておく必要がある。
一つの見通しだけでなく条件を変えて検証する
感度分析とは、楽観的な予測を一つだけ信じるのではなく、主要な条件が変化したときに損益と現金がどのように変わるかを比較する手順である。少なくとも基準シナリオに加え、顧客数の減少、客単価の低下、メニュー原価の上昇、人件費の増加が、それぞれ、または同時に発生する場合を確認する必要がある。
- 需要:予想顧客数が減少した場合でも、損益分岐点を超えられるか確認する。
- 価格:目標客単価が低下した場合、必要な注文数が現実的か計算する。
- 費用:原材料費と人件費が増加した場合、月間の現金不足額を再計算する。
- 資金:不利な条件でも、運転資金をいつまで維持できるか点検する。
不利な条件でも耐えられるのであれば実行を検討し、固定費が過大であれば店舗や人員の規模を縮小する必要がある。顧客数や客単価の想定が非現実的であれば、メニューと販売方法を修正する。運転資金が短期間で尽きる場合は、計画を保留することが合理的である。
計算表に入力した数字にも根拠がなければ、家族の直感と大きな違いはない。候補店舗周辺の時間帯別の通行量や競合店舗の利用状況を調査し、メニューテストと限定的な試験営業を通じて、販売価格、実際の原価、調理時間、顧客の反応を継続的に修正する必要がある。家族との話し合いも賛否を尋ねるだけで終わらせず、どのような条件なら実行し、いつ中止するかを合意するプロセスにしなければならない。